不安に感じてもリスクはないかもしれない

人が動かない原因の一つに恐れ、不安があります。リスクを恐れると行動を躊躇してしまうということです。

例えば、山登りをやってみたいけどクマに遭遇したら怖いとか、遭難してしまったらどうしようという恐れは生命に対するリスクなので、躊躇する理由としては十分なのではないでしょうか。

ではリスクがない。もしくは限りなく可能性が低い場合はどうでしょうか?

山登りが熊本の山だったら、くまモンはいるかもしれませんが、クマはいません。九州はヒグマやツキノワグマの生息地域ではありません。また、GPSを持って、衛星携帯電話を持っていけば遭難のリスクは低くなるでしょう。対処法があります。

リスクと言われているものが実はリスクではない、またはリスクが低いということがあります。

というわけで、科学的に確認することはとても大事だね。ということを学んだ今回の論文は「ZHANG, X., LI, Y. & LIU, D. 2019. Effects of exercise on the quality of life in breast cancer patients: a systematic review of randomized controlled trials. Support Care Cancer, 27, 9-21.

内容は乳がん患者さんのQOL(Quality of Life)に対するエクササイズ効果を確認するシステマティックレビューです。はい、ジャーナルクラブですね。担当は有永さんです。

医者は「生きていればいい」と、考えがちですが、患者にとっては1つしかない命であり人生です。

QOLを高めた方がいい人生になるのは当然ではないでしょうか。私は長期入院したことがあり、体力が著しく低下したので結構ハードなリハビリをやった経験があります。医者は無理をするなと言いましたが出来る範囲のチャレンジしなければ体力がつかないということくらい考える脳みそはありました。

だからなのか、当初、乳がん患者の方がなぜ運動をリスクと捉えているのかわかりませんでした。

そのため、論文に先立って乳がん患者の方に何が起こりやすいのか、何をおそれているのかをインターネットで調べると、運動をするとリンパ浮腫になるのではないかという不安があることがわかりました。
参考にした亀田メディカルセンターのWebサイト

論文の結果は乳がん患者に対し、運動は安全でかつ、QOLを効果的に改善するという結果です。その運動はウォーキングやサイクリングのような有酸素運動、ウェイトトレーニングやマシンなどを使ったレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)その二つを組み合わせた複合運動の3種類を全て調べていました。

自分もトレーニングは日常的に習慣化しているのでどんなトレーニングをしたのか大体想像ができるのですが、心拍数を結構上げるハードなものもありました。

そして、誰かアドバイスや監督してくれる人がいた場合は脱落者が少なかったということで、習慣化を強化するためには他者のフィードバックが有効という心理学的に言われていることが確認されていて嬉しい気持ちになりました。

これだけリスクを軽減し、安全性が確認されたとしても、「もしそうなったらどうする?」という不安を持つ人もいるでしょう。やりたくない人は別の「やらない理由」をつくりだします。

熊本にクマはいないと言っても「くまモンがいるのにクマがいないわけがない!」と言われるかもしれませんが、科学的にリスクをみつめると「正体見たり枯れ尾花」ということになるかもしれません。

なお、科学を信じないという方への対処法は知りません。

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